◯ まいどおおきに~映画メモでおます
◯ 第七芸術劇場サイトより抜粋引用
時の行路
2019年/日本/111分
監督神山征二郎
原作田島一
「時の行路」「続・時の行路」「争議生活者」(新日本出版社刊)より
ナレーション日色ともゑ
出演石黒 賢、中山 忍、松尾 潤、村田さくら、渡辺 大、安藤一夫、綿引勝彦、川上麻衣子
公式サイトhttp://www.tokinokouro.kyodo-eiga.co.jp/
労働者の人権とは何か、 そして人間の尊厳とは―― ある派遣労働者一家の、闘いと希望の物語。 青森の八戸でリストラにあった五味洋介(石黒賢)は妻の夏美(中山忍)と子どもたちを実家に残して静岡の大手自動車メーカーの工場の旋盤工として働きながら、仕送りを続けていた。洋介は派遣社員であったがベテラン技能者として職場でも信頼され、充実した日々を送る合間に家族を三島に呼び、ともに暮らせる将来を夢見て頑張っていた。 しかし、ある日突然、リーマンショックに端を発した非正規労働者の「大量首切り」により職場を追い出されてしまう。洋介は理不尽な仕打ちに抗し、仲間と一緒に労働組合に入って立ち上がった。だが洋介や妻たち、支援の人々の願いは届かず、会社と裁判所は冷酷だった。 そんな折、闘病中の夏美が倒れたと いう知らせを受け、洋介は郷里へ向かう・・・・。
◯ 所感 ◯
コロナ禍の日本はリーマンショックに見舞われた2008年を越えるといわれている。
容赦ない失業、倒産の嵐が吹き荒れるリーマン時代。そんな中で、夫婦が、親子、家族がどう生き抜いてきたのかをたどる映画だ。
実話に基づくストーリーは迫力がありリアルだ。
派遣社員が今まで無縁であった労働争議に全身で立ち向かう。家族をも顧みず。
だが、こういうテーマをこんな形で描いて果たして今の時代に共感を得ることができるのだろうか疑問に思った。
情報が新しい価値を生み出し働き方が大きな変化を遂げた昨今とても若い人たちはついていけない。
映画としては古色蒼然としたイデオロギー、働く仲間の友情を描いているがあまりにも古典的風景で共感するのは高齢層のマルキスト計りだろう。全編通して某政党の体質がにじみ出ていて、とても暗く救いようのない気分にさせる。
まるで、今の野党勢力がなぜ人の心を捕まえきれないのかを確かめる反面教師的作品だ。
気ばって生きる、耐え抜いて何かと闘うことは悪くはないが面白くはない。正論で真っ向勝負する時代は終焉した。
既に日本の労働法制も労組もことごとく破綻している。特に既成労組は保身からその役割を終えている。
連合は、公務員か、大企業の労働者が己だけの利益を要求するために集まったものであり、形はリベラルを装うが、実態は自民党政治を支持している実態だ。
複雑かつ多様な労働形態の変容は働く人達の分断を生み出し多くは未組織で労組は骨抜きとなり大きな力にはなり得ていないのが実状だ。
残念だが法廷で得られるものは大きなうねりにはならない。分断されたものを繋ぐものは何か‥見直されるのは何か‥変えるには「労働法制」と政治体制そのものにメスを入れねばならない。
再生するには新たな繋がり、経済観、世界観から立て直さないところまできている。資本家対労働者の構図ではもはや捉え、救えない情報化社会・個のネットワーク時代を迎えている。
硬直化した対立図式ではなく、新しい福祉国家像、北欧諸国をモデルにした国家観が必要だ。
一度きりの人生は肩の力を抜いて楽しんで生きたい。大変化の時代、どんな時も‥時代に即した身の丈の改革が求められる。
子ども達のなりたい職業
これからはベイシックインカム、ブロックチェーン、デジタル通貨の時代だ。コミュニティ、マイホーム、家族、親しい絆の時代だ。大きな転換期に求められるのは新しい発想とそれを担う人だ。
ここ数年でもっとも陰鬱で暗い気持ちになった救いようのない作品だった。おすすめできない映画に出会った。