紀州屋良五郎の大衆演劇・上方芸能 通信

大衆演劇については全国の劇場や公演場所に出かけ、その地での公演の所感・演出効果・劇団の印象を綴ります。さらに大道芸や上方落語、講談、音頭、漫才、見世物、大道芸、放浪芸、映画評についても思いつくままに書き留めてまいります。 末永くのおつきあいをよろしくお願いいたします。

▩ 映画『罪の声 』を見た

〇 まいどおおきに〜映画メモでおます

☆かつて日本中を震撼させた未解決事件。

 グリコ森永事件をモチーフにした塩田武士のミステリー小説に基づく映画『罪の声』を見た。

 

 

 

 

【雑感】

時効となったグリコ森永事件にミステリーの切り口で挑む。

 

それは捜査の鍵となった3人の子ども達のテープに吹き込まれた声だった。

この映画の際だってユニークな所は犯罪に協力させられた子ども達のその後の人生にスポットをあてているところだ。

 

この子ども達とは誰なのか、犯人との関わりは、そしてなぜ子どもを使ったのか、この子達は時効が成立してもこの世界で生き続ける。

 

どんな人生が、そして苦難が待ち受けているのか。

隠そうとした事実の背景を知るに及んだ時どんな人生が待っているのか…

 

尽きぬ疑問、絡み合った糸を丹念にほぐしていくように映画は展開する。

 

毒薬を使った犯行だが表向きの死傷者はない奇っ怪な事件だった。

 

何のための犯行なのか株価操作という経済犯罪を狙った犯行だったというのがほぼ真相だろうとされている。

 

いわば、ホリエモンライブドア事件リクルートと狙いは同じだが手法は毒の混入で殺人を教唆する点は一線を画す。株価を暴落によって空売りによって暴利を手にする点においては手の込んだ経済事件であるこが特異である。

 

結論を言えば一つ一つに不自然さを感じる映画である。

なぜ、新聞記者が罪のない3人の子の行く末を洗い直し、究極の所、何をしたかったのか。

 

また時効後の事件を取り上げることで結果的に子供らの人生を攪乱することに対する記者としての自責の念はないのだろうか。

 

また、声の主であった子が記者会見をひらくだろうか。

 

犯罪にいたった背景がそれなりに描かれているが、それはあまりに通説すぎないか。

 

事件の底流にあるものとして-同和関係者犯行説・困窮者による略奪説・権力に恨みをもつものの犯行など-この映画では警察官によるえん罪、学生運動の挫折を底流に置いているが背景を深く考えないものが見れば、そういった事への関わりが犯行に結びつくと印象操作してしまいかねない危うさを感じる。

 

まさに『罪の声』のほんとうの声主はいわれなき子ども達の声ではなく、国家という権力構造の闇そのもので犠牲者は翻弄される生活弱者ではないのか。そこいらを鋭く描いて欲しかった。

 

とてもわかりにくく後味の悪い映画である。


光っていたのは生島聡一郎/宇野祥平と生島望/原菜乃華の迫力ある演技だった。

 

 

 

 

STORY

新聞記者の阿久津英士(小栗旬)は、昭和最大の未解決事件の真相を追う中で、犯行グループがなぜ脅迫テープに男児の声を吹き込んだのか気になっていた。一方、京都でテーラーを営む曽根俊也(星野源)が父の遺品の中から見つけたカセットテープには、小さいころの自分の声が録音されていた。その声は、かつて人々を恐怖のどん底に陥れた未解決事件で使用された脅迫テープと同じものだった。

キャスト

小栗旬星野源松重豊古舘寛治宇野祥平篠原ゆき子原菜乃華阿部亮平、尾上寛之、川口覚阿部純子、水澤紳吾、山口祥行堀内正美木場勝己橋本じゅん桜木健一浅茅陽子、高田聖子、佐藤蛾次郎佐川満男宮下順子塩見三省正司照枝沼田爆、岡本麗、若葉竜也須藤理彩市川実日子火野正平、宇崎竜童、梶芽衣子

スタッフ

原作:塩田武士
監督:土井裕泰
脚本:野木亜紀子
音楽:佐藤直紀
主題歌:Uru
プロデューサー:那須田淳、渡辺信也、進藤淳一
撮影:山本英夫
美術:磯見俊裕、露木恵美子
照明:小野晃
録音:加藤大
編集:穗垣順之助
助監督:藤江儀全
衣装:宮本まさ江
記録:加山くみ子
制作担当:吉田智、間口彰
キャスティング:おおずさわこ
ラインプロデューサー:橋本靖
宣伝プロデューサー:江上智

上映時間
142分
 
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