紀州屋良五郎の大衆演劇・上方芸能 通信

大衆演劇については全国の劇場や公演場所に出かけ、その地での公演の所感・演出効果・劇団の印象を綴ります。さらに大道芸や上方落語、講談、音頭、漫才、見世物、大道芸、放浪芸、映画評についても思いつくままに書き留めてまいります。 末永くのおつきあいをよろしくお願いいたします。

▩ 映画『キネマの神様』を見た

◯ まいどおおきに~映画メモでおまんねん

 

予告編

 


 


 

 

STORY

ギャンブル狂いのゴウ(沢田研二)は、妻の淑子(宮本信子)や家族にもすでに見捨てられていた。そんな彼が唯一愛してやまないのが映画で、なじみの名画座の館主テラシン(小林稔侍)とゴウはかつて共に映画の撮影所で同じ釜の飯を食った仲だった。若き日のゴウ(菅田将暉)とテラシン(野田洋次郎)は、名監督やスター俳優を身近に見ながら青春を送っていた。

キャスト

沢田研二菅田将暉永野芽郁野田洋次郎北川景子寺島しのぶ小林稔侍、宮本信子

スタッフ

監督・脚本:山田洋次
脚本:朝原雄三
原作:原田マハ
音楽:岩代太郎
VFX監修:山崎貴
撮影:近森眞史
美術:西村貴志
照明:土山正人
編集:石島一秀
録音:長村翔太
プロデューサー:房俊介、阿部雅人

上映時間  125分
 
 
◯ みたまま・感じたまま ◯
 
山田組の集大成のような映画である。もともと主演はコロナで逝った志村けんだった。
それを沢田研二が力演している。さぞかし、志村さんも天国からエールをおくっていることだろう。
 
山田映画の特徴でもあるのだが細部にこだわりがある。たとえば家庭の冷蔵庫。どこの家にもあるように磁石のクリップやメモが貼られている。さらに、撮影所の告知ビラなども手書きだ。こんなところを見るとほのぼのとしてくる。
 
風景の中に鉄道の駅舎や鉄道が出てくる。
撮影開始に向かう監督に火打ち石で送り出すシーもとても目を引く。カツドウ屋の断面を見る。これらもノスタルジーにしっかり浸かれる細かい演出が随所に見られ映画好きにはたまらない仕掛けに満ちている。
 
一世を風靡したあの沢田研二がアル中、ギャンブル狂の老人でシルバーセンターのアルバイトで小遣い稼ぎをしているなどはかなり、リアルな老後だ。でも助監督時代のロマンスと連れそう二人の熱愛は老夫婦となった今も色あせない。嫌みなく爽やかでとてもいい。
 
『カットとカットの間に映画の神が宿る』という言葉は人生にも、仕事にも通じる至言だ。
志村の東村山音頭を歌うシーンは鎮魂のハイライトだ。
 
この映画を見た人は自分の青春の一コマにふと振り返ることになるだろう。