紀州屋良五郎の大衆演劇・上方芸能 通信

大衆演劇については全国の劇場や公演場所に出かけ、その地での公演の所感・演出効果・劇団の印象を綴ります。さらに大道芸や上方落語、講談、音頭、漫才、見世物、大道芸、放浪芸、映画評についても思いつくままに書き留めてまいります。 末永くのおつきあいをよろしくお願いいたします。

▩ 浅井グループ オーエス劇場 2022/04/13

 見てもろておおきに〜まいどおなじみの観劇メモでおます

 

感染対策は万全、客席はマスク必須。入り口で消毒。前回の公演より遥かに多い集客。80余り。

 

オーエス劇場スケジュール

5  春陽座

6  嵐山瞳太郎劇団

 

 

浅井グループのスケジュール

4  松山劇場

 

とにかく、芝居のうまい劇団だとこの劇場でも評判。両座長とも以前からずっと見ているが座長になってからぐんぐん磨きがかかっている。見る度に楽しみだ。

 

メンバー

総座長  浅井春道

座長  浅井海斗

花形  浅井大空海

浅井みのり

浅井ひかり

浅井陽子

浅井まり

加茂川竜子

責任者  浅井正二郎

 

■ ゲスト出演  三河家諒

 

顔見せミニショー

 

新作芝居 「木鼠吉五郎」  

作・三河屋諒

浅井大空海‥役人・清太

浅井ひかり‥役人・熊五郎

浅井海斗‥旅人・木鼠吉五郎(吉蔵)

浅井春道‥役人の親方

浅井陽子‥役人・虎五郎

浅井れの‥お花(清太の許嫁)

浅井みのり‥おみつ

三河屋諒‥茶店女将お島(清太の母)

 

ほか

 

あらすじ

 

場所は信州太田村のとある茶店。ふらりと現れた旅人が女将の上州訛りから今日までの経緯を尋ねる。この女将には里子に出した子がいた。

 

それを聞いた旅人は‥ふと、想うことがあり、その里子に出したという子の名を尋ねる。

すると、女将は「吉蔵」というではないか‥

 

 三河屋諒と浅井海斗が紡ぎだす余韻と絶妙な間、格調たかい芝居の空気がたまらない。

 

‥‥省略‥‥

 

母に手を合わせ、かわいい弟の縄目にかかる吉五郎。おっかあ大事にしろよと言いきかす。

 

引かれゆく吉五郎をみるや母は心の糸をたぐりよせる。この空気がえもいえない妙演。

 

母が今世の別れとなる、一杯の水をのませてやる。この水の味は死んでも忘れねぇと吉五郎。

 

そっと、取り出す財布のカネ、おらが死んだと

聞いたなら線香を手向けておくんなせぇとさしだす。

 

おっかあ、このひとの名はと口を切る弟。

いっちゃぁならねぇと遮る吉五郎。

 

吉五郎、おっかさん〜

 

兄弟が兄弟を演じる結末、力の入った熱演となる。思わず熱いものがこみ上げる。

 

涙を拭う客席。

 

新作に挑む俳優陣の稽古の汗の結晶が客席に伝わる。

 

***********

 

口上挨拶  座長  浅井海斗

・スケジュール、前売り券&グッズ販売

19日休演

 

舞踊ショー  

・工夫こらした飽きさせないショー構成

・ラスト舞踊‥田原坂

  

【画像】

ほんの一年、見ない間にも着実に力量増した役者陣、鳳となって舞い上がる・紀州屋良五郎

 

 

*《解説》BooさんのBlogから全文引用させていただきました

  三河屋劇団のものです。

 

第2部お芝居は、江戸の盗賊木鼠吉五郎。ゲストあおい竜也、竜美獅童、華原涼、沢村菊之助、司春香。

 薩埵峠で茶店を営んでいるおしもは一人息子がいた。名は清太。目明しをしているが、仕事をほったらかし、博打三昧。そんな清太を、町奉行の山本が咎めるが一向にいうことを聞かない。目明しの親方万五郎は、清太の亡き父と兄弟分。しかも娘お花が許嫁。どうしたものかと困っていた。

 ある日旅人が休みに来た。旅人の名は吉五郎。茶を一杯と休憩した時、おしもの上州訛りに気がついた。なんでも、上州高崎で30年前に結婚をしたが、子供を生まれてから亭主は働かず、ほどなく10両の借金をこさえて死んでしまった。仕方なく息子は里子に出し、自分は岡場所に叩き売られた。半年して、死んだ亭主に身請けされた。亭主は役人で、八方手を尽くしてくれたが、息子は見つからず、高崎まで探しに行ったが、行方知れずだった。そのあとに生まれた息子が清太。親の跡を継ぎ目明しになっているという。里子に出した息子さんの名は、吉蔵といいます。ハッとする吉五郎。飯を食べてと言われ飯を食うが、思わず涙ぐむ。いや何、人情紙切れ1枚より軽い世の中、こんな人情味のある人にあったのは初めてだ。そこに清太が金の無心。おしもから奪っていった。あれが息子さんですかい。甘えてるだけですよ。ところで、今お天道様の下をまともに歩けないようになった息子さんが来たらどうします。それでも量のかいなで抱きしめ、私のせいでこうなったんだからといって謝ります。今も陰膳据えて拝んでます。茶店をあとにする吉五郎。一計を案ずる。
博打ですってんてんにされた清太。目の前に現れたのはさっきの旅人。親の七光りで役人になったんだって。他人のお前に言われる筋合いはない。ちゃんと仕事はしてるよ。ほう、ではこの地にいま悪党が入っているが誰かわかるか。その悪党はこの俺だ。懐の人相書きを見て驚く。しかし十手捕縄はない。思わず草履片手に御用だ。ふざけるんじゃねぇ。この木鼠の吉五郎様がそんなもので捕まえられるか。向かっくる清太をかわし、どすで額を叩き割った。泣きながら十手捕縄を取りに行く清太。清太よ、お前には俺の分まで親孝行してもらわなくっちゃならねえんだ。お前の捕縄にかかると、2回級特進で、50両の報奨金が出る。そこに万五郎たちが。万五郎の腕を斬り付け、逃げていった。

 そこにやって来た清太。親方がやられているのを見て誓う。博打もやめ、必ず捕まえます。それでこそ男だ。お前のオヤジに餞けできる。


 店じまいをした茶店の前の吉五郎。おっ母さん、あったら恨み言のひとつでも言ってやろうと思いましたが、さっきの話を聞いてそれも失せました。清太は、きっといい役人になります。あいつの捕縄に掛かかります。それがせめてもの親孝行。だれでぇ、話を聴いていたのは清太。あんちゃんだろ。里子に出したあんちゃんがいれば、親の代わりに意見をしてくれるだろうといつもおっ母さんが言っていた。一目おっ母さんにあってくれ。抜け道は知ってる。逃げてくれ。馬鹿野郎、お前は俺の分まで親孝行しなくちゃならねぇんだ。お前の捕縄に掛かり、土で3尺木で3尺、6尺高い木の上で死ぬのが俺のさだめだよ。泣く泣く縄目にかける。そこに山本と万五郎がやっていた。でかしたぞ、清太。たとえ親兄弟を縄目にかけようが、役目を忘れるではないぞ。十手を曇らしてはダメだ。おっ母さんに知らせてやれ。お花が呼びに行く。出てきたおしもは、縄目にかかった人を見てびっくり。山本は、あとから番屋に連れてこい必ずだぞ。俺は2刻あとに帰るからといって、情けをかけた。吉五郎は水を所望したら、清太は母親に飲ませるように言った。おばさん、これが俺にとっちゃ末期の水だ。死んでも忘れねぇ味だ。なぁおばさん、俺も里子に出され、最初は良くしてくれた。しかし、その家に子供が生まれ継子いじめ。最初はなんで俺だけかと思ったが事情を聞いて子供ながらに分かった。5つでその家を出たんだ。それからは、雲霧仁左衛門の配下として、盗人生活だ。懐の巾着を清太に取らせておしもにわたす。俺が江戸で死んだと聞いたら、たとえ折れた先行1本でいいからそこの金から上げてくれ。あんたが死んだと聞いたらその日を命日として、毎年上げるよ。別れの時が来た。さぁ旦那行きましょうか。おっ母さん、この人は・・・。馬鹿野郎、俺の今までの苦労無駄にする気か。ハッとするおしも。巾着を開けて中から出てきたのは肌守り。吉蔵ー。泣く清太を立ち上げて、おっ母さん。兄弟二人は、泣きながら番屋に向かうのであった。

 ここまで書くのに1時間超え。好きな芝居を書くとどうしても長くなる。評価はホームランや。ゲストも多く非常に見ごたえのある芝居。沢村菊之助が、頼りない弟清太を好演!見事なヘタレっぷりやった。

 江戸時代は連座制。親兄弟も処罰された。だから親子名乗りは絶対にできない。自分に出来ることは、弟を更生させて、自分の分を含めて親孝行してもらうこと。上州生まれの妙齢の女がいると聞きつけては、母親ではないかとの旅。瞼の母に通じるもんがある。ひとつ残念なのが、最後のシーンで自分の生い立ち喋ったところ。あそこで1回涙が引いた。最初の出会いで話したほうが、最後はスッキリ、こってりと出来たんちゃうかな。それにしてもこういったいなたい芝居は好きや。

 今日はダブルの大入り。夜の部でも50人ほどの客入り。

ゲスト、20日恋川純弥、21日かつき夢二。