紀州屋良五郎の大衆演劇・上方芸能 通信

大衆演劇については全国の劇場や公演場所に出かけ、その地での公演の所感・演出効果・劇団の印象を綴ります。さらに大道芸や上方落語、講談、音頭、漫才、見世物、大道芸、放浪芸、映画評についても思いつくままに書き留めてまいります。 末永くのおつきあいをよろしくお願いいたします。

▩ 映画『とんび』を見た

ドラマ化もされた重松清の小説を映画化。監督は『明日の食卓』などの瀬々敬久

 

 

STORY

昭和37年。瀬戸内海に面した備後市で運送業に就くヤス(阿部寛)は、妻・美佐子(麻生久美子)の妊娠に喜ぶ。幼いころに両親と離別したヤスにとって息子・アキラの誕生にこの上ない喜びを感じるが、美佐子が事故死してしまう。姉貴分のたえ子(薬師丸ひろ子)や幼なじみの照雲(安田顕)、和尚の海雲(麿赤兒)などに支えられながら、アキラを育てるヤス。ある日、誰もが口を閉ざしていた母の死の真相を知りたがる息子に、ヤスはあるうそをついてしまう。

キャスト

阿部寛北村匠海、杏、安田顕大島優子濱田岳宇梶剛士尾美としのり、吉岡睦雄、宇野祥平、木竜麻生、井之脇海田辺桃子田中哲司豊原功補嶋田久作村上淳麿赤兒麻生久美子薬師丸ひろ子

スタッフ

原作:重松清
監督:瀬々敬久
脚本:港岳彦
音楽:村松崇継
主題歌:ゆず
撮影:斉藤幸一
照明:豊見山明長
録音:高田伸也
美術:磯見俊裕、露木恵美子
装飾:龍田哲児
編集:早野亮
VFXスーパーバイザー:立石勝
衣裳:纐纈春樹
ヘアメイク:小泉尚子

上映時間
139分

 

 

 

◯私が見たまま、感じるまま◯
 
とても、感動的な作品である。ラストの回想シーンは涙を誘う。不器用、荒削りな父親役を演じる阿部寛に新たな役者の一面をみた。私は折に触れ大衆演劇を見る。
 
かねてから、阿部寛を見たら「スーパー兄弟」の龍美麗にイメージがだぶってしかたがない。言うまでもなく演技は秀逸だ。
 
母親を亡くし父独り、必死の思いで息子を育てあげる。昭和の時代、濃密な人間関係、近隣の人たち皆がわが子の成長を見守るようにかかわる姿に古きよき日本の原風景をみる。
 
燻し銀の魅力・麿赤兒、優しく寄り添う薬師丸ひろ子がからみ、情感溢れるドラマになっている。杏、大島優子もいい絡みで見せ場をつくる。
 
『山あり谷ありのほうが人生も美しい』とつぶやくなかに全てが凝縮している。
 
 ちちと息子が縺れあいながら太い一本のロープでしっかり結ばれる、そんな親子に心があらわれる。