紀州屋良五郎の大衆演劇・上方芸能 通信

大衆演劇については全国の劇場や公演場所に出かけ、その地での公演の所感・演出効果・劇団の印象を綴ります。さらに大道芸や上方落語、講談、音頭、漫才、見世物、大道芸、放浪芸、映画評についても思いつくままに書き留めてまいります。 末永くのおつきあいをよろしくお願いいたします。

▩ 映画『冬薔薇』(ふゆそうび)を見た

阪本順治監督の最新話題作

 

 

 

 

STORY

港町に暮らす渡口淳(伊藤健太郎)は、不良仲間とつるみ、友人や女性にお金をせびりながら過ごしていた。両親は埋立て用の土砂を運ぶ海運業を営んでいたが、年々仕事が減っており、淳と両親の間には会話もほとんどなかった。ある日、淳の仲間が襲われる事件が起きるが、犯人像は予想外の人物だった。

キャスト

伊藤健太郎小林薫余貴美子、眞木蔵人、永山絢斗、毎熊克哉、坂東龍汰河合優実、佐久本宝、和田光沙笠松伴助、伊武雅刀石橋蓮司

スタッフ

脚本・監督:阪本順治
音楽:安川午朗
音楽プロデューサー:津島玄一
撮影:笠松則通
照明:渡邊孝一
録音:照井康政
美術:原田満生、我妻弘之
編集:普嶋信一
衣裳:岩崎文男
ヘアメイク:豊川京子
マリン統括ディレクター:中村勝

上映時間 109分
 
◯ 私の見たまま感じたまま ◯
 
冬薔薇は冬に咲く薔薇、温室育てられた花ではなく冬枯れのなかでそだつ花である。
 
人生という棘を払いのけつつもだえながらも生きる息子、渡口淳の生きざまと親子のもどかしい情を描いた映画である。
 
 全体にモノトーンの映画。淡々と父子、親子、友の関係を描く。描きかたは実に自然だ。迫るでもなく、腫れもの触るようにぎこちない。そこがリアルである。距離がうまるようで埋まらない。喧噪のなかでみなが言い知れない孤独を感じている。そんな現実に共感できるところがある。
 
石橋蓮司小林薫、などのベテラン陣が重厚な演技を魅せ、人生終盤の哀感が滲む。砂利船、斜陽産業を背景に肉親の断絶と愛着が交差しながら展開するこのドラマは異色だ。
阪本順治監督作品のアクションシーンはやはり引き込む力を放つ