紀州屋良五郎の大衆演劇・上方芸能 通信 はてな版

大衆演劇については全国の劇場や公演場所に出かけ、その地での公演の所感・演出効果・劇団の印象を綴ります。さらに大道芸や上方落語、講談、音頭、漫才、見世物、大道芸、放浪芸、映画評についても思いつくままに書き留めてまいります。 末永くのおつきあいをよろしくお願いいたします。

▩ 映画『ベイビー・ブローカー』を見た

◯ カンヌ受賞で話題の是枝裕和監督作品を見た

🔸予告編

 

 

STORY

クリーニング店を営む借金まみれのサンヒョン(ソン・ガンホ)と、「赤ちゃんポスト」がある施設に勤務するドンス(カン・ドンウォン)の裏の顔はベイビー・ブローカーだった。ある晩、二人は若い女性ソヨン(イ・ジウン)が赤ちゃんポストに預けた赤ん坊をひそかに連れ去る。翌日考え直して戻って来たソヨンが赤ん坊がいないことに気づき警察に届けようとしたため、サンヒョンとドンスは自分たちのことを彼女に告白する。

キャスト

ソン・ガンホカン・ドンウォンペ・ドゥナ、イ・ジウン、イ・ジュヨン

スタッフ

監督・脚本・編集:是枝裕和
製作総指揮:イ・ユジン
プロデューサー:ソン・デチャン、福間美由紀
共同プロデューサー:ユン・ヘジュン
撮影:ホン・ギョンピョ
照明:パク・ジョンウ
美術:イ・モグォン
衣装:チェ・セヨン
音楽:チョン・ジェイル

 
上映時間 130分
 
◯ 私の見たまま、感じたまま ◯
 
子どもの人身売買をテーマにした映画である。社会の底辺を生きる人々が主人公だ。
 
初期の是枝作品『しかし… 福祉切り捨ての時代に』に見られるような一人の人に寄り添う温かい視点が全編を貫く。
 
冒頭のシーンは衝撃的だ。若い女が教会にある子捨てポスト(赤ちゃんポスト)に我が子を捨てに来る。それを尾行していた女刑事がつぶやく『捨てるなら生むな』と。
 
私は、思う。まだ、韓国には宗教心や社会倫理が生きているなと。もちろん、日本にも赤ちゃんポストのような活動をされているところもあるが。ほとんどのニュースは「嬰児遺棄」「虐待殺害」で目を覆うばかりだ。
 
誰かに拾って貰っても「命」の尊厳だけは…守りたいという最低限のモラルがある韓国社会。
 
「産まずに殺す」「産んですてる」国、「産んで殺す」
残念だが虫けらのように…平然と廃棄物を処理するように殺害し捨てゆく国・日本はやはり心が壊れつつある。
 
まさに、宗教心どころかルラルまでも崩壊したかのように映る。
 
この映画の面白さは、子を捨てた女が、ブローカー達と共に暮らし斡旋の活動を始めていく内に、いつしか疑似家族のような愛に包まれていくところだ。
さらには、観客をも次第にその優しい気分に巻き込まれてしまう。
 
この映画を見ているとなぜか大衆演劇のいくつかのシーンが甦ってくる。
それはまさに、「ふるさとの兄」であったり「瞼の母」といった古き良き時代のノスタルジーを感じさせるのはなぜだろう。
 
人生の深い苦悩がわかる人ならこの映画のやさしさにきっと気づくに違いない。
さすが受賞作だ。期待は裏切らない。おすすめできる映画だ。