紀州屋良五郎の大衆演劇・上方芸能 通信

大衆演劇については全国の劇場や公演場所に出かけ、その地での公演の所感・演出効果・劇団の印象を綴ります。さらに大道芸や上方落語、講談、音頭、漫才、見世物、大道芸、放浪芸、映画評についても思いつくままに書き留めてまいります。 末永くのおつきあいをよろしくお願いいたします。

▩ 映画『川っぺりムコリッタ』を見た

〇 今日はこんな映画をみました。

 

 

川っぺりムコリッタ (本編:120分)

 

『レンタネコ』『彼らが本気で編むときは、』などの荻上直子が監督と脚本を務めたドラマ。

 

STORY

できるだけ人と関わらずに生きたいと思い、北陸の小さな街にある塩辛工場で働くことにした青年・山田(松山ケンイチ)。工場の社長からハイツムコリッタという古い安アパートを紹介されて住み始めた彼は、風呂上がりに飲む冷えた牛乳をささやかな楽しみにする静かな毎日を送る。そんな中、隣人の島田(ムロツヨシ)が風呂を貸してほしいと部屋に上がりこんでくる。それを機に島田との間に友情のような感情が芽生え、ほかの住人とも触れ合うようになるが、北陸にやってきた理由を島田に知られてしまう。

 

キャスト

松山ケンイチムロツヨシ満島ひかり江口のりこ黒田大輔知久寿焼、北村光授、松島羽那、柄本佑田中美佐子薬師丸ひろ子笹野高史緒形直人吉岡秀隆

 

スタッフ

監督・脚本・原作:荻上直子
音楽:パスカルズ
製作:堀内大示、五老剛、多湖慎一、中西一雄、益田祐美子、亀山暢央、竹内力五十嵐淳之、鈴木貴幸、川村岬、中西修、駒澤信雄
企画プロデュース:水上繁雄、飯田雅裕
プロデューサー:野副亮子、永井拓郎、堀慎太郎
共同プロデューサー:成瀬保則、神保友香
撮影監督:安藤広樹
照明:重黒木誠
録音:池田雅樹
美術:富田麻友美
装飾:山崎悠里
スタイリスト:堀越絹衣
衣裳:村上利香
ヘアメイク:須田理恵
編集:普嶋信一
VFX:古橋由衣
整音:瀬川徹夫
音響効果:大河原将
フードスタイリスト:飯島奈美
スクリプター:天池芳美
助監督:藤森圭太郎
制作担当:鳥越道昭

 

上映時間
120分

 

川っぺりムコリッタ (講談社文庫)
Amazon(アマゾン)
704円

 

映画パンフレット 川っぺりムコリッタ
Amazon(アマゾン)
3,880円

 

 

この映画は見る人ごとに、プリズムのように違う光を放つ不思議な映画である。

スタッフ
監督・脚本・原作:荻上直子、音楽:パスカルズ、製作:堀内大示、五老剛、多湖慎一、中西一雄、益田祐美子、亀山暢央、竹内力五十嵐淳之、鈴木貴幸、川村岬、中西修、駒澤信雄、企画プロデュース:水上繁雄、飯田雅裕、プロデューサー:野副亮子、永井拓郎、堀慎太郎、共同プロデューサー:成瀬保則、神保友香、撮影監督:安藤広樹、照明:重黒木誠、録音:池田雅樹、美術:富田麻友美、装飾:山崎悠里、スタイリスト:堀越絹衣、衣裳:村上利香、ヘアメイク:須田理恵、編集:普嶋信一、VFX:古橋由衣、整音:瀬川徹夫、音響効果:大河原将、フードスタイリスト:飯島奈美スクリプター:天池芳美、助監督:藤森圭太郎、制作担当:鳥越道昭
 
〇 私の見たまま、感じたまま 〇
 
監督は「かもめ食堂」の荻上直子荻上監督は、南カリフォルニア大学大学院で映画製作を学んだ国際派。
 
この映画、はじめにタイトルに引きつけられた。ムコリッタって何んだろう?
 
調べると仏教語で時間の単位だ。サンスクリット語の音訳で牟呼栗多と書く。わかりやすく云うと1/30日の時間にあたるらしい。1牟呼栗多は48分に換算できる。
 
考えながら映像を見る。あらわれる風景はまさに、日本の原風景。河川敷とその川っぺりにあるハイツムコリッタという古びたアパートに暮らすまことに不思議で奇妙で個性的な人達のストーリーだ。
 
終始一貫、カメラワークは生き物を追う。『なめくじ』『蜘蛛』『うじ虫』『金魚』『ヤギ』『蚊』…それらの生と死を丁寧に追い続ける。それに呼応するように登場人物も生から死への流れを抜き出すように丁寧に描く。
 
わかりやすいかと問われれば「否」というしかない。なのに、余りに詩的すぎて浸り込んでしまう魔術に掛かってしまう。どこまでが、現実で、どこが幻想なのか。いいのだ。それが、ひとの生そのものなのだから。
 
そして。それらの出来事は「ムコリッタ」とい限られた時間、有限の中に繰替えされていく。
小さな「いのち」の瞬きが、大空にも宇宙にも溶け込み渾然一体となっていく。
「いのち」というものを映像で表現したらこんな作品になるという事を示唆してくれている。
 
なぜか、どこか、以前見た黒沢監督の『どですかでん』という作品を思い起こさせた。
 
この映画では、飯を食うという「いのち」をつなぐリアルな行動が素晴らしくうまく描かれている。
とくに白米と、そのおかず、特に発酵食品や自作食材への愛が満ちていて極めて特徴的な作品だ。
 
また、穏やかな川がほんの一ムコリッタで牙を剥く荒川に変貌し洗い流す、おなじように人の不幸な過去も一ムコリッタで大きな変化を遂げるものなのかもしれないことをきづかせてくれる。
 
理屈はいい。鉄道、鉄橋、河川敷、川、使い捨てられた廃品、そして、日本の原風景としての人情アパート、生き物を慈しむ人たち。
 
自分自身を見つめ続ける人の『念』が伝わるいい映画だったとしてまとめておこう。