紀州屋良五郎の大衆演劇・上方芸能 通信

大衆演劇については全国の劇場や公演場所に出かけ、その地での公演の所感・演出効果・劇団の印象を綴ります。さらに大道芸や上方落語、講談、音頭、漫才、見世物、大道芸、放浪芸、映画評についても思いつくままに書き留めてまいります。 末永くのおつきあいをよろしくお願いいたします。

▩ 映画『アイ・アム まきもと』を見た

〇 今日はこんな映画をみました。

 

STORY

とある市役所で、人知れず亡くなった人を埋葬する「おみおくり係」として働く牧本壮(阿部サダヲ)。空気が読めず人の話を聞かない彼は、故人を思うがあまり周囲を振り回すこともしばしばだった。そんなある日、おみおくり係の廃止が決定する。孤独に亡くなった老人・蕪木孝一郎(宇崎竜童)の葬儀が最後の仕事となった牧本は、故人の身寄りを探すために友人や知人を訪ね歩き、蕪木の娘・津森塔子(満島ひかり)のもとにたどり着く。

キャスト

阿部サダヲ満島ひかり、宇崎竜童、松下洸平、でんでん、松尾スズキ坪倉由幸宮沢りえ國村隼

スタッフ

監督:水田伸生
脚本:倉持裕
原作・エグゼクティブプロデューサー:ウベルト・パゾリーニ
製作総指揮:ウィリアム・アイアトン、中沢敏明
エグゼクティブプロデューサー:堤天心、志賀司、中西一雄、島本雄二、井川泉
プロデューサー:上木則安、厨子健介
コプロデューサー:藤村哲也、丸山典由喜
ラインプロデューサー:鈴木嘉弘
撮影:中山光一
照明:宗賢次郎
美術:磯見俊裕
装飾:柳澤武
録音:鶴巻仁
音楽:平野義久
人物デザイン監修:柘植伊佐夫
編集:洲崎千恵子
キャスティング:田端利江
助監督:相沢淳、村田淳志
制作担当:井上純

上映時間
104分
〇 私の見たまま、感じたまま 〇
とてもユニークな映画である。原作は2013年製作のイギリス・イタリア合作映画「Still Life」(邦題「おみおくりの作法」)をリメイクした作品だそうで当初のタイトルも「Still Life」だったらしい。
個性派の名優・阿部サダヲが好演している。まさに、この人ならではの個性が光る作品である。

しかも、脇を固める俳優陣がまた、いい。庄内平野の美しい光景はほっとした思いに浸らせてくれる。ラストシーンに流れる宇崎竜童の歌うOver the Rainbowが心に沁みてくる。

 

人知れず亡くなった人を埋葬する「おみおくり係」として小さな市役所で働く人物まきもと。

実直すぎて空気の読めないキャラクターがまきおこすコメディタッチの作品だが扱っている素材はとってもシリアスな社会問題ー孤独死ーだ。

 

孤独死」をみおくる福祉課の職員が自費を負担してまで葬儀まで出して大切に「おみおくり」するという作品になのだが、このぶっとんだ設定には共感より、あまりに浮き上がった感触を与え思考が停止してしまう。

 

まきもと氏の人生が全く描かれることなく、さまざまな孤独死にかかわり、仕事の一線を超えてまで私費で葬儀まで出すのは何故なのだろう。推量の範疇を飛び出し、見る人に突き放された疎外感を与えはしまいか心配になる感じを抱いた。

 

葬儀の簡素化、墓じまい、が人の関心を呼ぶ現代。

人のエンディングにかかわり、寄り添う「まきもと」が何故、「葬儀」という「儀式やかたち」にこだわったのかが私にはわからない。

 

どうせ、ぶっとんだ人物として「まきもと」を登場させるなら既存の儀礼をぶち壊すような、この人ならではの様式で「おみおくり」するのがもっと、もっとおもしろくなるはずだ。

 

人の物差しが通用しないこの「まきもと」という人物に私が期待するのは一般儀礼を飛び越えた「寄り添いかた」だとはたと気付いた。

 

残念ながら何を伝えたいのかよくわからない映画であった。私はあまりお勧めはしない。

 

**