〇 まいど、おおきに。こんな映画を見ました。
〇 予告編
- STORY
- 劇映画デビュー作「家路」で高く評価されたドキュメンタリー出身の久保田直監督が、日本全国で年間約8万人にも及ぶという「失踪者リスト」に着想を得て制作したヒューマンドラマ。「いつか読書する日」の青木研次がオリジナル脚本を手がけ、愛する人の帰りを待つ女性たちに待ち受ける運命を描き出す。
北の離島にある美しい港町。登美子は30年前に突然姿を消した夫の帰りを待ち続けている。漁師の春男は彼女に思いを寄せているが、彼女がその気持ちに応えることはない。そんな登美子の前に、2年前に失踪したという夫・洋司を捜す奈美が現れる。奈美は自分の中で折り合いをつけて前に進むため、洋司がいなくなった理由を求めていた。ある日、登美子は街中で偶然にも洋司の姿を見かける。 - キャスト
-
田中裕子、尾野真千子、安藤政信、ダンカン、白石加代子、長内美那子、田島令子、山中崇、阿部進之介、田中要次、平泉成、小倉久寛
- スタッフ
- 上映時間 126分
〇 私が見たまま、感じたまま 〇
けっしてわかりやすいという映画ではない。
第一、取り上げるテーマもとても重いテーマなのだからしかたがない。いま、この平和ぼけした日本で年間八万人もの人が失踪している。理由はさまざまであろう。この映画がZoomupしなければそのような現実もかき消されてゆく。
さすがは、ドキュメンタリー出身の監督だとても映画にしにくいであろう「重いテーマ」に焦点をあててくれたと喝采を送りたい。
決して、政治問題としての拉致をメインにしたのではないが十二分に拉致被害における分断された家族の表現出来ない苦しみの一端も感じることができる気がする。
田中裕子、尾野真千子、白石加代子といった芸達者な名優によるキャスティングだけでもひきつけるものがある。
30年前に姿を消した夫を待ち続ける登美子(田中裕子)、そんな彼女の存在を知り訪ねてきた島で働く看護師の奈美(尾野真千子)もまた、教師の夫・洋司(安藤政信)が2年前に失踪していた。
似たような境遇の奈美と手がかりを探る登美子は、次第に彼女と自分を、洋司を夫とだぶらせていく。そんな時、偶然渡った新潟の街で登美子は洋司の姿を見つける。
おなじく夫を待ち続ける境遇ではあるが自身の人生の捉え方が違っていた。それは、年齢によるものなのか、境遇なのか、愛の形の違いなのか、けじめのつけ方の違いなのかとてもとても、理解しがたい世界が拡がる。
それを解くひとつの手がかりは奈美が登美子に言い放つ言葉だった。「あなたの中で夫はもう死んでいるとわかっているから待ち続けることができるのよ」このひとことはとても重く、深く突き刺さってくる。
しかし、これとて当事者でなければ心境はわからない。
わかったのは、孤独の中で生きていくには人は余りに儚くももろい。仮設でも、幻影でも、妄想でもいい必死にすがりながら生きながらえていくことだけだ。
全編が佐渡で撮影された映画だ。日本海の荒波とかつては遠島の流刑地でもあった佐渡。
情景の美しさとは対照的に厳しくもつらい現実が映し出される。
はっと気づくのである。だれびとにも悲しさのない人生はない。
救いようのない人生にもきっと木漏れ日がさすときがある。
たとえ幻想でも一条の光で生きていけるのが「人」かもしれない。
そんなことを考えさせる作品だった。