紀州屋良五郎の大衆演劇・上方芸能 通信

大衆演劇については全国の劇場や公演場所に出かけ、その地での公演の所感・演出効果・劇団の印象を綴ります。さらに大道芸や上方落語、講談、音頭、漫才、見世物、大道芸、放浪芸、映画評についても思いつくままに書き留めてまいります。 末永くのおつきあいをよろしくお願いいたします。

▩ 映画『エゴイスト』を見た

〇 LGBTQが議論される中でこんな話題作を見た

〇 予告編

 

 

〇 概要

STORY

東京の出版社で、ファッション誌の編集者として働く浩輔(鈴木亮平)。自由気ままな日々を送る彼だが、14歳で母を失い、田舎町でありのままの自分を隠しながら思春期を過ごした過去があった。ある日彼は、シングルマザーである母親を支えながら働く、パーソナルトレーナーの龍太(宮沢氷魚)と出会い、惹(ひ)かれ合っていく。亡き母への思いを抱える浩輔は、母親に寄り添う龍太に手を差し伸べ、彼を愛する日々に大きな幸せを感じる。あるとき浩輔は、龍太とドライブの約束をするが、龍太はいつまでたってもやってこなかった。

キャスト

鈴木亮平宮沢氷魚中村優子、和田庵、ドリアン・ロロブリジーダ柄本明阿川佐和子

スタッフ

原作:高山真
監督・脚本:松永大司
脚本:狗飼恭子
音楽:世武裕子
企画・プロデューサー:明石直弓
プロデューサー:横山蘭平、紀嘉久
ラインプロデューサー:和氣俊之
撮影:池田直矢
照明:舘野秀樹
サウンドデザイン:石坂紘行
録音:弥栄裕樹、小牧将人
美術・装飾:佐藤希
編集:早野亮
LGBTQ + inclusive director:ミヤタ廉
スタイリスト:篠塚奈美
ヘアメイクデザイン:宮田靖士
ヘアメイク:山田みずき、久慈拓路
助監督:松下洋平
制作担当:阿部史嗣

上映時間 120分
 
〇 私の見たままを、感じるままに 〇
 
まずもって、鈴木亮平の演技を称賛したい。じつに、うまいとしか云いようがない。
おそらくこんな表現が難しい映画はそうないだろう。
センシブルな男性間の性行為シーン、自然なキスシーン。
 
美しく、さりげなく、せつなく、清潔感をもって描くこれは難題だ。見ていて不思議な気持ちにさえなった。性の境がないのである。いやらしくないのである。
なんといってよいか、言葉が見つからないが…自然なのである。
好きという感情の果てに自然な行為としてあるものとでも云っておくか。
 
世間一般に云う嫌悪感など吹っ飛んでしまうほど自然なのである。開き直りではなく「男と男」が結婚して何が悪いのと思える映画なのである。
 
それも、これも鈴木亮平宮沢氷魚の演技のうまさがなせるワザ、MOVIEマジックなのかもしれないが、ともかく自然なのだ。
 
この映画のキモは龍太の母〈阿川佐和子〉のことばに集約されている。それは、龍太が浩輔を好きになった人として母に会わせたときの言葉だ。
 
母は云う「あの人があんたの大事な人でしょ それが、男であろうと女であろうとなんでもないことよ 母さんはそう思うの」
 
息子はひたすら母に何度も「ごめんなさい」と繰り返す。切ないシーンだ。
そこにあるのは、ゲイでもバイでもホモでもない あるのはただ生身の人間なのだ。
 
そこで、私流のタイトル解釈だが「エゴイスト」とはいったい誰なのか…それは、きっと、かたくなに「男」「女」の性にこだわる偏狭な考え方の人のことなのだろうと悟った。
この映画が描こうとしたものは「に・ん・げ・ん」そのものの本質なのだろう。
 
できれば、多くの人に見てほしいと思う映画である。