紀州屋良五郎の大衆演劇・上方芸能 通信

大衆演劇については全国の劇場や公演場所に出かけ、その地での公演の所感・演出効果・劇団の印象を綴ります。さらに大道芸や上方落語、講談、音頭、漫才、見世物、大道芸、放浪芸、映画評についても思いつくままに書き留めてまいります。 末永くのおつきあいをよろしくお願いいたします。

▩ 映画『西成ゴローの四億円 -死闘編-』を見た

◯ 楽しみの続きを見た。前編もよかったが更に上回る迫力だ。

 

 

 

 

 

西成に根ざしたゴローは日雇い労働と四億円をつくるための闇仕事に勤しむ日々を過ごしていた。記憶が少しずつ回復するなか、その原因を作ったのはゴルゴダ加藤雅也)だったことを思い出す。
ゴルゴダは、とある教会を根城に表向きは信仰団体を装い闇社会に生きる、秘密結社テンキングスのアサシンヘッド。最高位幹部の百鬼万里生(木下ほうか)の元、邪魔な人間を始末していた。
ゴローと縁が出来た闇金姉妹の松子(徳竹未夏)と梅子(古川藍)は暴力団たちと西成の利権争いをしていたが、姉妹のバックにいる韓国眞劉会会長のウーソンクー(石橋蓮司)により守られていた。そんな松子は、ゴローに少しずつシンパシーを感じ、用心棒にならないかと声かける。
ある時、西成に新型ウイルスが蔓延する。ゴローの仲間たちもウイルスに感染し、倒れていった。ゴローが心を許していたカネやんこと金本康治(笹野高史)もウイルスに侵されてしまう。カネやんは、近々、息子と暮らすためだと目と腎臓を売って金を手にしたばかりだった。このウイルスを故意に国外から持ち込んだのがゴローだとニュースが流れる。それはゴルゴダたちと手を組んだ日向が影で糸を引き流したデマ報道だった。
テンキングスの魔の手が真理子と娘に伸びていることを知ったゴロー。それを救ったのは、ゴローに強い復讐心を抱いていた莫炉修吉だった・・・。

監督:上西雄大|出演:上西雄大津田寛治山崎真実/徳竹未夏/古川藍/笹野高史/木下ほうか/波岡一喜加藤雅也(友情出演)/松原智恵子(友情出演)/石橋蓮司(特別出演)/奥田瑛二

 

 

「その仕事、なんぼや?」 所持金0円の無敵の男が、家族のために捨て身で稼ぐ。 人情の町、西成。人情の男、ゴロー。
大阪の西成に住む、日雇い労働者・土師晤郎。腕っぷしが強くて皆から頼られる反面、殺人罪で服役していた過去から「人殺しのゴロー」という異名を持っていた。断片的に記憶を失った彼だが、元政府諜報機関工作員だったこと、妻と娘がいたことなど記憶を少しずつ取り戻していく。ある時、家族の現状を知ったゴローは、固く決意する。「心臓移植が必要な難病を患う一人娘のために、どんなことをしてでも四億円を稼いでみせる」ということを――。 本作は、世界中の映画祭で感動の嵐を巻き起こした映画『ひとくず』(2020年ロンドン国際映画祭グランプリ&主演男優賞受賞ほか多数受賞)の上西雄大が、新たにメガホンをとったオリジナル作品。現代社会に巣食う闇の世界や人間の情の力を根底に、大金を稼ごうと必死に抗う一人の男の生き様が描かれる。同時に、登場人物たちの所持金や貯蓄額からその人物の生活や経済観念が分かる構成になっておりリアルな人間模様を味わうことのできるマネー・クライム・エンタテインメントが新たに誕生した。 主人公のゴローを上西本人が演じ、主要キャストには多彩な俳優陣が揃う。ゴローの最大の敵となるフィクサー奥田瑛二、政府諜報機関時代のゴローの元同僚に津田寛治、ゴローの元妻に山崎真実、ほか松原智恵子笹野高史加藤雅也、木下ほうか、波岡一喜、『ひとくず』で色濃く印象を残した徳竹未夏、古川藍等が出演。そして、死闘篇(後篇)のキーマンとなる韓国巨大マフィアの会長を石橋蓮司が演じる。

 

◯ 私の見たまま・感じるまま ◯

まず、破格の構成と演出、そしてバラエティに富んだキャラクターの設定。ひとり、ひとりの人物の個性が輝いてみえる。まことに西成らしく、生き生きと素のまま、まる出しで命を繋ぐ様が浮き彫りになって迫ってくる。迫力あるアクション、真剣さのなかにフッと息抜きができる笑い、ホロリと泣かせるシーン、それらがかやくめしのように、ばら寿司のように展開されていく。まったく息つく間も与えない。浪花節のハッピーエンドは上西イズムだ。わたしは、何作か見てトリコになってしまった。宗教的権威やまやかしの権力、仮面の人達を地べたから見上げあざ笑う小気味よさが是の映画の魅力だ。いや、上西雄大の魅力だ。