紀州屋良五郎の大衆演劇・上方芸能 通信

大衆演劇については全国の劇場や公演場所に出かけ、その地での公演の所感・演出効果・劇団の印象を綴ります。さらに大道芸や上方落語、講談、音頭、漫才、見世物、大道芸、放浪芸、映画評についても思いつくままに書き留めてまいります。 末永くのおつきあいをよろしくお願いいたします。

▩ ドキュメンタリー映画『天空のサマン』を見た

〇 サマンとはシャーマンの語源だそうだ。神秘に満ちた映画だが現在の混迷を解く鍵がここにあった。

2023年/日本/118分

監督金 大偉

特別企画顧問能澤壽彦

音楽金 大偉

ナレーション金 大偉

公式サイトhttps://www.shaman-heaven.com/

 

 

 

天地人を繋ぐ、満洲族の塊。 シャーマニズムの源泉へ ​ロスト マンチュリア サマン」の金大偉 監督が 再び中国東北を訪ね、残存する最後のサマン儀式を巡る 満洲シャーマニズムの深淵を探求するドキュメンタリー 

 

シャーマニズム清王朝満洲族の信仰であり、魂である。 

失われゆく満洲サマン(シャーマン)の世界...... 

失われゆく満洲語...... 再び中国東北

の全域を訪ねて、 残存する希少なサマン儀式との出会い、 二度と撮れない貴重な映像を初公開。 

 

天地人の融合、見えない世界との接点を探る。 失われゆく薩満(サマン)の宇宙の時空へ向かって、 アイデンティティーを求めて 時空を超え、天空への旅が続く。

 

〇 私の見たまま、感じたまま  〇

 

シャーマンの語源がサマンであることをはじめて、この映画で知った。さらに、栄華をきわめたかの清王朝満州族がきづいたことも。ドキュメンタリーは知識の海を拡げてくれる大人の学校だ。

 

その満州人も今では大国・中国のなかでわずか1000万人で、ネイティブな満州語を話せる人達はもはや十数人となっている。満州人の父と日本人の母をもつ監督ならではの想いが結晶した希有な作品である。

 

この、映画に登場する人達の顔、顔、顔。それを見ていると私が子どもの頃、日本のそこかしこで見られた顔に見えてしかたがない。儀式で奏でられる太鼓、伎楽の旋律も、歌の調べも「ハッ」とするような郷愁に見舞われる。そうだ、あれはまさしく昭和の日本の一断面だ。

 

ただ、現在の日本と大きく違うことがあるとするば、それは「永遠の宇宙を感じる心」「天と人を結ぶ畏敬の念」「神仏への敬虔な祈り」だろう。いつのまにか、見失ったものはあまりにも大きいとこの映画は私に気づかせてくれた。

 

私たちは、いつしか奢りに満ちた人になり果ててしまったようだ。

本来、見えるものすらおきざりにして、なんと小さな芥子粒のような人間に退化してしまったのか‥この映画に身を吸い寄せられるように没入した。それだけの魅力がある映画だ。

 

気がついたら長編のドキュメンタリー映画の中で心は天空の旅に引き寄せられ、いつしか宇宙の時空に身を委ねたような、ゆったりとした気持ちになっていた。