紀州屋良五郎の大衆演劇・上方芸能 通信

大衆演劇については全国の劇場や公演場所に出かけ、その地での公演の所感・演出効果・劇団の印象を綴ります。さらに大道芸や上方落語、講談、音頭、漫才、見世物、大道芸、放浪芸、映画評についても思いつくままに書き留めてまいります。 末永くのおつきあいをよろしくお願いいたします。

▩ 「硫黄島の闘い」を公演 和歌山海南市・すわん江戸村 劇団紀州公演 2024.08.18

 4カ月ぶりのすわん江戸村

〇 劇団マスコット犬『石松』(8才)はきょうも元気だった。近く、市川昇さんデザインによるマスコット犬石松の三度笠バージョンTシャツが発売の予定だ。

 

 

 

〇 今年は例年になく戦争を記念する番組が少ないという。「火垂るの墓」も放映されない。そんな中、師匠・市川昇次郎が和歌山の片隅から「戦争」の意味と悲惨さ、これから私たちがどう向かいあうかの意味を問う力作を発信した。

 

映画にもなったテーマであるが、いまだ詳細まで語られない「硫黄島」での闘い。その中で多くの若者たちが散っていった。遺骨収集もままならずその真実すら、いまだ解明されない戦場の暗部を「大衆演劇」として取上げた意味は大きい。

 

いまだ、日本兵一万人が行方不明となっている謎を追った本「硫黄島上陸」(酒井聡平著・講談社)はいま、大ベストセラーとなっている。

 

 

本日の公演は江戸村ではお馴染みの高橋茂紀さんが鬼の軍曹役で奮闘している。

 

1 お芝居『硫黄島の闘い』

 

【あらすじ】

東京都から南に約1200キロ離れたところにある硫黄島

 

サイパンを攻略した米軍が次に目をつけたのがこの島だった。

 

本土防衛のために何としても硫黄島を守り抜かねばならない日本軍。

 

かくしてこの硫黄島に大量の兵士が送り込まれた。

 

配役 (不正確なところがあります)

 

市川昇‥上官・栗林

市川倖太郎‥ハーモニカを吹く兵隊

市川福之介‥兵隊・宮田  直子の兄

高橋茂紀‥軍曹

春菜美保‥兵隊・水野

市川太仁志‥兵隊さん

市川こより‥松本れい子

のの華‥直子

市川昇次郎‥召集兵

 

ほか

 

◆概略

映画にもなったテーマであるが遺骨収集もままならない硫黄島における日本兵とその家族の物語である。

 

市川昇次郎 作・演出

 

妹、直子への兄の手紙がナレーションで読まれて舞台が始まった。

 

場面は出征直前の直子の家

あれから1年が流れた  昭和19年4月16日

サイパンが陥落の放送が流れた

パン屋に嫁いだ直子は、慎ましく暮らしていた

新婚の夫婦は間もなく出産の運びだ

そこへ現れたのがサイパンで主人が戦死した婦人

さめざめ泣き、まだ令状がこない直子の夫をなじる。

 

 

 

 

直子の夫は、毎日、れい子の為にパンをやいてあげると約束

 

更に、訪ねてきたのが管轄の役兵(市川昇次郎師匠)

 

パン屋の主人に召集令状を届けに来たものだ

お腹の子に語りかける夫

 

場面は戦闘の硫黄島

島では、上官から敵が上陸してきて戦闘が始まっても玉砕覚悟で闘い抜いて欲しいと指令されている

 

大変なことがおきた、水野がやっきょうを一つ紛失して軍法会議にかけると言い渡され軍曹から責め苦に遭う  無念ゆえ自害をしようとするも仲間たちから制止される  ところが水野は米兵の銃弾に倒れる

 

死んでしまえば別れの杯、みんな靖国で逢おうと

上官。皆が書いた家族への手紙を器に収める

この手紙が届くことがないかもしれないが、もし届けば‥と言って 皆で歌を謳う

 

そこへ、大爆撃が‥凄まじい効果音  江戸村が揺れる   まさに、劇場が戦場となった  凄い臨場感

観客というより戦場にいる錯覚に

瀕死の兵隊たち、上官は自らの首を刎ねよ命令する

 

これが、直子の夫の最期だった

のち、昭和20年2月 硫黄島星条旗が翻った

その陰に2万人に余る人たちの屍があった そして、残された家族がいた。

 

 

〇 口上挨拶   師匠・市川昇次郎

 

 

 

この作品を上演した思いを語る師匠・市川昇次郎

新しく演劇を志し入門した若い二人を紹介。

・浅井倖すけ改め市川倖太郎‥新人の紹介

・更にもう1名の新人加入

    大学の卒業を待っての入団となる

 

 所感

素晴らしいセット、小道具へのこだわり。不眠不休で作り上げた手作りの舞台と真剣勝負の芝居にいつも魅了される

 

 

 第二部  舞踊ショー

所用のため、残念ながら見れず。

 

 

 

わたしの芝居のふる里 和歌山・海南すわん江戸村・紀州屋良五郎

 

太夫元 師匠は不死身だ。いつまでも健康でいてほしい。

テレビで「となりの人間国宝」にもなった。

大衆演劇として、ほんとの 「人間国宝」になってほしい人である。

 

駐車場は満杯、客席も満席だった。