紀州屋良五郎の大衆演劇・上方芸能 通信

大衆演劇については全国の劇場や公演場所に出かけ、その地での公演の所感・演出効果・劇団の印象を綴ります。さらに大道芸や上方落語、講談、音頭、漫才、見世物、大道芸、放浪芸、映画評についても思いつくままに書き留めてまいります。 末永くのおつきあいをよろしくお願いいたします。

▩ 映画『世界の終わりから』を見た

〇 なぜか、興味をそそられる。こんな映画を見た。

 

〇 概要

2023年/日本/135分

監督・脚本紀里谷和明

出演伊東蒼、毎熊克哉、朝比奈、彩、増田光桜、岩井俊二市川由衣又吉直樹冨永愛高橋克典北村一輝夏木マリ

 

〇 予告編

 

 

 

〇 あらすじ

 

高校生のハナ(伊東蒼)は、事故で親を亡くし、学校でも居場所を見つけられず、生きる希望を見出せずにいた。ある日突然訪れた政府の特別機関と名乗る男から自分の見た夢を教えてほしいと頼まれる。
心当たりがなく混乱するハナだったが、その夜奇妙な夢を見る。

 

〇 わたしの見たまま、かんじるままに 〇

 

実に見応えのある、息もつかせぬ135分だった。詳しくは説明されないが、主人公の生きてきた背景には現代の人間が抱える課題が移し込まれている。彼女は本来、心臓の病で若くなくなる業をもっていた。

 

運命を書き換えることができた父母が身代わりとなって事故死することで、彼女にこれからの生をつなぐ。だが、代償として経済苦、祖母の在宅介護、みとり、孤独を味わうこととなる。

 

彼女がある日、疲れ果て浴槽に浸かっているとやにわに記憶を失い、夢の世界に入っていく。

そこで、みたものは自らの永遠の過去とそして未来だった。

 

彼女がたどり着いた洞窟の中でとある老女が待っていた。そこで、みせられたのは自らの生命録のような記録帳だった。どうやら、その分厚い本には各人の命の記録として過去・未来が刻まれているらしい。

 

幾人かのものを見たら、すべて同じ日付で終わっていた。つまり、地球人類の命はそこで終わる何かが起こるのだった。だが、それは、ある特殊な能力のあるものだけは新に書き換えることができ、彼女の父母もそうであったように、その力は彼女に引き継がれている事をさとされる。

 

ただし、それの実行は彼女の心に委ねられいて、決断に苦悶する。人類をここで終わらせるのか、書き換えるのかあまりにも大きな決断に彼女はひれ伏し、たじろぎながら立ち向かっていく。

 

もし、あなたの命があと14日だとしたら、人類があと3日ですべて死に絶えるとしたらどうしますか‥

 

真に迫ってくる。リアルな描写、リアルな社会現象・背景が移し込まれていて迫ってくる。

主演の女優・伊東蒼さんがすばらしくいい。

 

映画が終わっても、神秘の淵に立たされてすぐに立てないような錯覚に陥らされた。そして、なぜか泣けた。この一日が有難いと思える映画はそうない。

 

よくできた、考えさせる映画である。できれば、ひとりで見てほしい。