紀州屋良五郎の大衆演劇・上方芸能 通信

大衆演劇については全国の劇場や公演場所に出かけ、その地での公演の所感・演出効果・劇団の印象を綴ります。さらに大道芸や上方落語、講談、音頭、漫才、見世物、大道芸、放浪芸、映画評についても思いつくままに書き留めてまいります。 末永くのおつきあいをよろしくお願いいたします。

▩ 映画『ハマのドン』を見た

〇 気骨ある気概の漢がハマからカジノを蹴散らす。

痛快なドキュメンタリー

山下ふ頭が候補地となっていたカジノを含むIR(統合型リゾート)計画。その阻止に立ち上がった藤木幸夫さんに密着した映画『ハマのドン』(製作 テレビ朝日)=写真=が、5月5日(金)より市内をはじめ全国約40館で公開される。

 「港で博打はやらせない」とIRに反対を貫いた保守の重鎮。映画は、その姿勢を鮮明にした2019年8月から、IR誘致撤回が確実となった21年夏の横浜市長選までを追った内容だ。地元の有力者やカジノ設計者のインタビューなども盛り込んでいる。

 

解説 2021年度テレメンタリー最優秀賞、第23回ワールド・メディア・フェスティバルのドキュメンタリー部門で銀賞に輝いたテレビ朝日製作のドキュメンタリーの劇場版。カジノ誘致問題をめぐり、賛成派と反対派が対峙した横浜市長選挙に、91歳で挑む反対派の藤木幸夫に密着した。監督は松原文枝。ナレーションはリリー・フランキーが担当する。

 

〇 予告編 〇

 

 

〇 概略 〇

 

STORY

2019年8月、横浜。“ハマのドン”の呼び名を持つ実業家・藤木幸夫は、歴代総理経験者や自民党幹部との人脈を持つ保守派の重鎮でありながら、当時の政府が推し進めるカジノ誘致に真っ向から反対する。世の中に「ものを言えない空気」があることを危惧する藤木は、カジノ誘致の賛否を問う住民投票条例を求める署名が法定数の3倍も集まったことに着目し、市民と手を組んで横浜市長選をカジノ誘致の賛否を問う場に変えていく。

キャスト

藤木幸夫

スタッフ

監督:松原文枝

上映時間
100分

〇 わたしの見たまま、感じるまま 〇

胸のすくように痛快な映画だ。ドキュメンタリーの説得力は半端じゃない。

藤木は語る「横浜の賑わいは港からはじまる。港は男達の聖地なのです」。

中央政界の大物や反社勢力にも広い人脈がある彼が「港で博打はやらせない」と決めた背景は、父の遺言にあった。

この映画は、91才の彼が命を賭しても信念を貫いた人間ドラマである。博打は必ずオケラになる。そして、家庭は崩壊する。ヤバいと思えばこの道(カジノ反対)を征かないとみっともないよ。

彼がカジノの弊害を深く知るきっかけになったのは自民党の古老であった。紹介された学者やアメリカでカジノビジネスを展開する男・村尾を招き、本場、ラスベガスや世界のカジノが衰退する実態を知るに及び益々、自らの信念に曇りがないことに確信を深くする。

なにより、彼はハマが好きだった。郷土愛とともに空襲を乗り越え、ここで生きてきた。

彼は云う。神奈川で第一号の自民党員は俺だ。その気迫の前に、菅前総理も怯んだ。自民党も捨てたものじゃない。気骨のある議員も党員もいる。

この「ハマのドン」が居てカジノ反対の魂はメラメラと市民たちの心を掴んだのだろう。どんな運動も命を張った人間の執念が決めていくことを有言にもの語る映画である。

なにより、話がコギミヨイのだ。そして、言葉に熱と力がこもっているのだ。人を引きつける魅力とはこれだと思わせてくれる映画に出会った。

見終えたあと、ああ人は、年齢じゃない。生きているかぎり思い切り悔いなく我が道を行くんだとエールを送ってもらった気がした。