紀州屋良五郎の大衆演劇・上方芸能 通信

大衆演劇については全国の劇場や公演場所に出かけ、その地での公演の所感・演出効果・劇団の印象を綴ります。さらに大道芸や上方落語、講談、音頭、漫才、見世物、大道芸、放浪芸、映画評についても思いつくままに書き留めてまいります。 末永くのおつきあいをよろしくお願いいたします。

▩ ドキュメンタリー映画『東京組曲2020』+同時上映を見た

〇 いつもの映画館、シアターセブンで、すきなドキュルンタリーを見るのは至福の時間だ。

 

〇 予告編

 

 

〇 概要

 

2023年/日本/95分

監督三島有紀子

出演荒野哲朗、池田良、大高洋子、長田真英、加茂美穂子、小西貴大、小松広季、佐々木史帆、清野りな、田川恵美子、長谷川葉月、畠山智行、平山りの、舟木幸、辺見和行、松本晃実、宮﨑優里、八代真央、山口改、吉岡そんれい(五十音順)

声の出演松本まりか

公式サイトhttp://alone-together.jp/

 

〇 内容

2020年4月 私たちは突然世界から遮断された 2020年4月7日。新型コロナウイルス対策のため「緊急事態宣言」が発令され、私たちの生活は一変。飲食店など幅広い業種に休業要請があり、様々なイべントも中止となった。 4月22日。映画監督・三島有紀子の誕生日である朝4時。どこからか女の人の泣き声が聞こえてきた。その時、想った。 「このコロナ禍で何を感じているのかが忘れられる前に、映像に残し、記録として確認しよう」 20名の役者たちが、実際に体験したことを元に、各自撮影した映像を三島が組み上げて作った〈シネマヴェリテ〉(カメラ=インタビュアーが撮影対象に積極的に関わることで真実の姿を引き出す作品)。 NHK在籍時ドキュメンタリーを手がけた彼女にとって初のドキュメンタリー映画となる。 「泣き声」を出演者すべての共通の出来事として描いた。「声」を聴いて、感情の動きや反応が記録された。コロナ禍で過ごした日常がつぶさに切り取られた、これは重要な作品である。泣き声は、女優の松本まりかによるもの。

 

〇 私の見たまま、感じたまま 〇

 

今回の作品はこの三年間のコロナ自粛時代にひとはどう生き、何をさまよい、そして苦悶し、どんな決断をしていったのかを深く考えさせる作品である。

 

もとより、コロナという疫病はすべて消え去ったわけではなく社会が1つの断をくだした側面はある。埋み火のようにとぐろを巻いてまた、いつ大火を放つやもしれない不気味さを孕んでいる。

 

奇しくも、この時に遭遇した私たちはそれぞれに自分を総括しておくことは貴重な記憶になる。

この映画は主人公に自分を重ねつつ、人生の断面をたどり刻む確かな一歩になる意味で貴重な作品だ。

 

まず、はじめにみたのが同時上映作品であった佐藤浩市主演の短編映画、『IMPERIAL大阪堂島出入橋』だ。この作品は監督自身の思い出の店である大阪・堂島の洋食レストランの閉店をきっかけに、在りし日の店を”記録“として残そうとした私小説的な一篇。

 

35年間店と共に歴史を積み重ねてきたシェフがデミグラスハンバーグを手に自らの過去を回想。そんなコロナ禍で、人生の悲哀を演じる佐藤浩市に演技に引きつけられる。佐藤演じるシェフが看板メニューのハンバーグステーキを手に、人生を振り返りながら夜道を歩く11分40秒の長回しは圧巻だ。15分の作品ながら私にはたっぷりの時間浸かるような思いを抱いたのは不思議な感覚だ。

 

続いて、本題の東『東京組曲2020』にうつる。

コロナ禍における仕事と生活、揺れる気持ちを半ドキュメンタリーのような形で再現して見せてくれた。登場するのはフリーランスの役者達。仕事が消え、支えとしてウーバーのバイトやライター、校閲の仕事で食いつなぐ。リアルな生活の断面が描かれている。

 

画面に見入りながら、私はあの時はこうしていた、ああしていたと思いがめぐる。それにしても政治は全く無力であったし、支えにすらならなかったな。

 

大阪ワクチン、イソジン騒動、パチンコ屋攻撃、自粛パトロール、ライブハウス悪玉攻撃、振り回されて時に今、自分が立っている所が見えないそんな時空をさまよった。

 

まだ、3年なのに、遠い昔の記憶のような感じさえしてくる。いけない。いけない。

まだ、ながされているのか。つまるところ、学んだのは『自分、友、家族、支えられている自分』それが確かなものであるということだった。