紀州屋良五郎の大衆演劇・上方芸能 通信 はてな版

大衆演劇については全国の劇場や公演場所に出かけ、その地での公演の所感・演出効果・劇団の印象を綴ります。さらに大道芸や上方落語、講談、音頭、漫才、見世物、大道芸、放浪芸、映画評についても思いつくままに書き留めてまいります。 末永くのおつきあいをよろしくお願いいたします。

▩ 映画『なれのはて』を見た

〇 まいどおおきに〜ドキュメンタリー映画メモでおます

 

なれのはて

2021年 / 日本 / 120分 / ブライトホース・フィルム 配給 

監督/撮影/編集粂田 剛

出演嶋村 正、安岡 一生、谷口 俊比古、平山 敏春

音楽高岡 大祐

公式サイトhttps://nareno-hate.com/

喧騒と熱気渦巻く生温かいカオス、フィリピンのスラムへようこそ 帰国することを諦めた日本人男性たち―“困窮邦人”と呼ばれる男たちの生活を7年間追い続けたドキュメンタリー!

 

マニラの貧困地区、路地の奥にひっそりと住む高齢の日本人男性たち。「困窮邦人」と呼ばれる彼らは、まわりの人の助けを借りながら、僅かな日銭を稼ぎ、細々と毎日を過ごしている。警察官、暴力団員、証券会社員、トラック運転手…かつては日本で職に就き、家族がいるのにも関わらず、何らかの理由で帰国しないまま、そこで人生の最後となるであろう日々を送っている。 本作は、この地で寄る辺なく暮らす4人の老人男性の姿を、実に7年間の歳月をかけて追ったドキュメンタリーだ。半身が不自由になり、近隣の人々の助けを借りてリハビリする男、連れ添った現地妻とささやかながら仲睦まじい生活を送る男、便所掃除をして軒下に居候している男、最も稼げないジープの呼び込みでフィリピンの家族を支える男…。カメラは、彼らの日常、そしてそのまわりの人々の姿を淡々と捉えていく

 

 

 

 

◯ 私の見たまま、感じたまま ◯

 

まさにタイトルの示すとおりの映画だ。自業自得の生き方が招いた老後、しかも異国の貧困街で暮らす人達を描いている。なぜか、喜楽でありのままを受け入れ、子どもや若い世代も混じり合い、まさに昭和30年代の日本の原風景に見えてくる。あの、みんなが等しく貧しかった時代に戻った気分だ。

 

日本で少々成功者として生きてきて、ちょっとした歯車の狂いからマニラにたどり着いた男達の物語だ。実に七年にも亘って丁寧に、やさしく、配慮しながら人の晩年を追っていく。監督の気遣いと優しさが随所に満ちている。ヤクザがいて、証券マンがいて、愛した家族を捨ててマニラで極貧の暮らしを楽しんでいきているように見える。

 

どう生きたって人の命には限りがある。後悔しない生き方なんぞあるわけがない。手探りであがきながら生きてきていつかは朽ち果てる。それは、日本にいても同じだが、より悲惨に見えるのは共同体といえるものがなくなってしまった現代日本には孤立と孤独が渦巻いていてより悲惨に見えるからだろう。

 

いちばん、印象に残ったのは郷愁に駆られ日本に戻ったとき、すっかり今の日本が変わっていて自分が安らかに暮らせる場所がないと感じるところだ。

 

このマニラの貧困地区のようなコミュニティはたしかにもう日本にはない。あるのは、それよりももっと深い孤立と孤独の闇だ。

 

人との繋がりまでもが分断され、いつの間にか高齢者にとって最も過ごしにくい国になったのかもしれない。

 

外国から見える日本が本当の日本なら、それに気づかず生きる私たちは夢をさまよう亡者に違いない。