紀州屋良五郎の大衆演劇・上方芸能 通信

大衆演劇については全国の劇場や公演場所に出かけ、その地での公演の所感・演出効果・劇団の印象を綴ります。さらに大道芸や上方落語、講談、音頭、漫才、見世物、大道芸、放浪芸、映画評についても思いつくままに書き留めてまいります。 末永くのおつきあいをよろしくお願いいたします。

▩ 映画『はざまに生きる、春』を見た

〇 人物像が気になりこの映画を見た

 

〇 予告編 〇

 

 

 

STORY

小向春(小西桜子)は、出版社で雑誌編集者として働いているが、仕事も恋人との仲もうまくいかない日々が続いていた。あるとき、彼女は取材で「青い絵しか描かない」ことで注目されている画家の屋内透(宮沢氷魚)と出会う。透は発達障害があり、感情を隠すことなく思ったことをストレートに口にするが、人の顔色ばかりをうかがってきた春には、そんな透がまぶしく見える。春は恋人に怪しまれながらも透に惹(ひ)かれていくが、他者の気持ちをうまく汲み取れない彼の言動に翻弄(ほんろう)される。

キャスト

宮沢氷魚、小西桜子、細田善彦、平井亜門、葉丸あすか、芦那すみれ、田中穂先、鈴木浩文、タカハシシンノスケ、椎名香織、黒川大聖、斉藤千穂、小倉百代、渡辺潤、ボブ鈴木、戸田昌宏

スタッフ

監督・脚本:葛里華
エグゼクティブプロデューサー:本間憲、倉田奏補、古賀俊輔
企画・プロデュース:菊地陽介、かなりかピクチャー
プロデューサー:吉澤貴洋、新野安行、松田佳奈
撮影:福本淳
照明:志村昭裕
録音:伊藤裕規
美術:福島奈央花
装飾:龍田哲児
編集:脇本一美
音響効果:大塚智子
スタイリスト:福士紗也佳
ヘアメイク:足立真利子
助監督:石井翔
制作担当:田中厚朗
絵画・イラスト:泉桐子
写真:塩原洋
音楽:石塚徹
音楽プロデューサー:田井モトヨシ
医療監修:五十嵐良雄
宣伝美術:石井勇一
予告編:川端翼

 

〇 純愛ものはいいなあ

上映時間
103分
〇 見たままを感じたままに 〇
映画を見るとき、いつもタイトルを考えてしまう。そこに、制作者の意図があると推測するからだ。
『はざまに生きる、春』の『はざま』とは病気でいうところの境界といった意味で、主人公が発達障害としてのアスペルガーである事に由来する。春はヒロインの名であると同時に、映画の大事な要素である季節としての春だ。満開の桜とサクランボが二人の恋の象徴だ。
惹かれ合う男と女は不思議だ。何処に気脈が通じるか当人達もわからない。
それが、また、恋愛の魅力だ。
夫ある女性との関わりを一顧だにしない天真爛漫な主人公。見ていて邪気がない恋。
宮沢氷魚の演技の卓抜したうまさがこの映画の肝だ。
しゃべり方や表情、間合い、雰囲気、随所に光るものがある。この映画を何気なく見たが、やっぱり見てよかったとあとで自分を褒めたくなった。そのぐらい、世界が拡がった感じがしたし、なんて、人間は素晴らしいんだと再認識させるものがあった。
ピュアでクールでひたむきで、ストレートで、なんの障壁も取り払うような男女の恋。ドロドロとした欲望や葛藤とはまた違った無縁のファンタジーが滲む希有の作品といえば褒めすぎたかな。
感情を言葉で伝えないと理解しにくい障害をもつがそれを補う記憶力と感性がひときわ鋭く、まさに、その天分を生かす職業にできた画家。
すべての人はなかなかそういう風には社会にはなじめない。障害ゆえの反発と辛酸がともなう。
余人には理解されにくい主人公。いわば現代の人たちが押し流されていく中でひょうひょうとコギミヨク生きていく天才ともいえる個性。
障害という月並みな当てはめだけでとてもわからない人間の複雑性に光りをあてた作品は生きる喜びを詰め込んでいる。自信を持ってお薦めの作品といえる。きっとあなたは自分に自信が湧いてくる。