紀州屋良五郎の大衆演劇・上方芸能 通信

大衆演劇については全国の劇場や公演場所に出かけ、その地での公演の所感・演出効果・劇団の印象を綴ります。さらに大道芸や上方落語、講談、音頭、漫才、見世物、大道芸、放浪芸、映画評についても思いつくままに書き留めてまいります。 末永くのおつきあいをよろしくお願いいたします。

▩ 映画『春画先生』をみた

〇 エロスの究極を探求し、その原点と歴史を網羅した快作だ。

〇 概要 〇

STORY

春画先生」と呼ばれる変わり者の研究者・芳賀一郎(内野聖陽)は、妻に先立たれ、取りつかれたように春画研究にのめり込んでいた。一方、目的もなく無為な日々を過ごしていた春野弓子(北香那)は一郎との出会いをきっかけに、春画に興味を抱くとともに彼に惹(ひ)かれていく。一郎が執筆中の「春画大全」を早く完成させようと焦る編集者・辻村俊介(柄本佑)や、一郎の亡き妻の姉・藤村一葉(安達祐実)の登場により、波乱が生じる。

キャスト

内野聖陽北香那柄本佑、白川和子、安達祐実

スタッフ

原作・監督・脚本:塩田明彦
製作:中西一雄、小林敏之、小西啓介
プロデューサー:小室直子
共同プロデューサー:関口周平
ラインプロデューサー:松田広子
音楽:ゲイリー芦屋
撮影:芦澤明子
照明:永田英則
録音:郡弘道
美術:安宅紀史
装飾:山本直輝
スクリプター:柳沼由加里
衣裳デザイン:小川久美子
衣裳:白井恵
ヘアメイク:齋藤美幸
編集:佐藤崇
サウンドエディター:伊東晃
VFXプロデューサー:浅野秀二
VFXディレクター:横石淳
助監督:久保朝洋
制作担当:宮森隆介
宣伝プロデューサー:大崎かれん

上映時間
114分

R15+

 15歳以上がご覧になれます
 
〇 予告編  〇

 

 

〇 私のみたまま、感じるまま 〇

春画をテーマにした映画は貴重だ。この一本を見るだけで春画文化史のあらましを垣間見ることができる。

 

大スクリーンに無修正で映し出されるおおらかな男女の『まぐあい』の絵画作品の数々

は深く見るたび卑猥さなどというレベルを超えておおらかさを放ち、ユーモアに満ちている。

 

それを大人の男女が、家族が鑑賞する春画観賞会がこの日本で随所で行われていたと知ると古き良き時代に戻りたくなる。

 

もともと日本は『日本書紀』の国造り神話にあるようにおおらかな性文化が息づいていた。

かつて春画は『笑い絵』として親しまれてもいた。また、村々で繰り広げられる祭礼と盆踊りは、暗闇にかくれた密会、乱交の場でもあった。いまにものこる風習やご神体には、男女の性器をかたどったものが沢山見られる。

 

それも、欧米のキリスト教文化の洗礼をうけ、禁欲的な考えに変容していったのが現在の日本である。この映画をみれば愛と性の深淵にふれることができる。

 

その、表現しがたい部分を主人公の春画先生に扮する内野聖陽は見事に演じている。

亡き妻とは、七日七夜、こもって身体を結び、愛し合った貴重な体験をとおし、さまざまな愛のかたちが表現されている。四十八手・鶺鴒・スカトロ・盗聴・寝取らせなどなどSMの本質にまで触れる。

 

これだけの要素を入れ込んだ作品は又とないだろう。この映画は是非ともカップルで見てほしい作品だ。おおらかに性が語られる時代はきっと平和な時代になると私は信じてやまない。