紀州屋良五郎の大衆演劇・上方芸能 通信

大衆演劇については全国の劇場や公演場所に出かけ、その地での公演の所感・演出効果・劇団の印象を綴ります。さらに大道芸や上方落語、講談、音頭、漫才、見世物、大道芸、放浪芸、映画評についても思いつくままに書き留めてまいります。 末永くのおつきあいをよろしくお願いいたします。

▩ 映画『高野豆腐店の春』に泣かされた

〇 高野豆腐がすきな私がタイトルで思わず錯覚した映画。この映画は良質の人情噺みたいな泣かせる映画だった。そのまま、大衆演劇にしたいような、こんな映画はどうですか?

 

こうやどうふではなく、たかのとうふてんでした。

 

〇 予告編

 

 

STORY

広島・尾道の下町で、職人かたぎの店主・高野辰雄(藤竜也)と一人娘・春(麻生久美子)が切り盛りする高野豆腐店。父娘は早朝から工場に入り、こだわりの大豆を使って丁寧に豆腐を作る日々を送っていたが、あるとき辰雄は医師から心臓の具合が悪いことを告げられる。離婚歴がある春のことを心配した辰雄は、娘の再婚相手を本人に内緒で探し始める。辰雄の友人たちの協力により、春はシェフの村上ショーン務(小林且弥)と食事をすることになるが、実は彼女には交際中の相手がいた。

キャスト

藤竜也麻生久美子、中村久美、徳井優山田雅人、日向丈、竹内都子、菅原大吉、桂やまと、黒河内りく、小林且弥赤間麻里子、宮坂ひろし

スタッフ

監督・脚本:三原光尋
エンディングテーマ:エディ藩
製作・プロデューサー:枡井省志
製作:太田和宏
プロデューサー:土本貴生、山川雅彦
撮影:鈴木周一郎
照明:志村昭裕
録音:郡弘道
美術:木谷仙夫
編集:村上雅樹
音楽:谷口尚久
タイトルデザイン:赤松陽構造
助監督:金子功、小村孝裕
アシスタントプロデューサー:吉野圭一

 

上映時間  120分
〇 わたしのみたまま、感じるまま 〇
広島・尾道の今がたっぷりと味わえる映画なのだ。
どこか寂れた商店街と地元でしか味わえない春の瀬戸内鯛、それに豆腐料理の数々。
朝早くからはじまる手作りの豆腐屋の日常を縦糸に、その町で暮らす人たちの笑いに満ちた交流が描かれる。がんこな父が大好きという娘が離婚して実家にもどり、それを再婚させるべく見合いの知恵比べがコミカルにはじまる。
タイトルの「春」は看板娘の名だ。横糸に織りなすのは「今も被爆に苦しむ家族」「伝統の味を守り通す食へのこだわり」他人の子を実の娘として育てる父の愛だ。
細部のそこかしこに人情噺のエキスを贅沢に詰め込んだ映画なのだ。
ほのぼのとしたなかにも豆腐のにがりがホロッと絡むとっても感動的な人間ドラマだ。
そのまま切り取ると、大衆演劇にできるような名場面がいくつも登場する。
いや。ラストちかくになると何度も泣かされましたね。
近年、こんなに泣かされたのは久しぶりだな。
実を言うとタイトルに惹かれて見ただけだったがこれが、大当たりだった。
枯れて渋い藤竜也にからむ麻生久美子の演技が中々いい。
食と人情と本音の生き方という滝に打たれてみたい人には是非、お薦めの作品だ。