紀州屋良五郎の大衆演劇・上方芸能 通信

大衆演劇については全国の劇場や公演場所に出かけ、その地での公演の所感・演出効果・劇団の印象を綴ります。さらに大道芸や上方落語、講談、音頭、漫才、見世物、大道芸、放浪芸、映画評についても思いつくままに書き留めてまいります。 末永くのおつきあいをよろしくお願いいたします。

▩ 映画『春に散る』を見た

沢木耕太郎の原作ということで見たくなった

 

〇 予告編

 

 

〇概要 

STORY

不公平な判定で負けた後アメリカへ渡り、40年ぶりに帰国した元ボクサー・広岡仁一(佐藤浩市)は、偶然訪れた飲み屋で、自分と同じように不公平な判定で敗北し心が折れたボクサー・黒木翔吾(横浜流星)と出会う。人生で初めてのダウンを仁一に奪われたことで、翔吾はボクシングを教えてほしいと仁一に頼み込む。やがて二人は世界チャンピオンを目指し、共に夢を追いかけていく。

キャスト

佐藤浩市横浜流星、橋本環奈、坂東龍汰、松浦慎一郎、尚玄、奥野瑛太、坂井真紀、小澤征悦片岡鶴太郎哀川翔窪田正孝山口智子

スタッフ

監督・脚本:瀬々敬久
原作:沢木耕太郎
脚本:星航
音楽:田中拓人
製作:鷲見貴彦、園田憲、依田巽、益田祐美子、河内真人
エグゼクティブプロデューサー:木村麻紀
チーフプロデューサー:麻生英輔、松下剛
プロデューサー:星野秀樹
共同プロデューサー:佐治幸宏
ラインプロデューサー:及川義幸
キャスティングディレクター:元川益暢
撮影:加藤航平
照明:水瀬貴寛
録音:高田伸也
美術:井上心平
装飾:櫻井啓介
編集:早野亮
VFXスーパーバイザー:立石勝
スクリプター:江口由紀子
衣裳:纐纈春樹
ヘアメイク:那須野詞
音響効果:岡瀬晶彦
題字:池田樂水
助監督:副島正寛
制作担当:馬渕敦史
ボクシング指導・監修:松浦慎一郎
ボクシングアドバイザー:田中繊大内山高志
スーパーバイザー:池田朋寛

上映時間
133分

 

〇 私の見たままを感じたままに綴る 〇

 

美しい映画である。こんなふうに燃焼させて桜の花びらとともに舞い散る事ができる男の人生であったなら素敵だ。

 

ボクシングの世界に生きてきた男の人生に題材をとりながら、その実、息苦しい時代と社会の葛藤や不条理を絡め合わせた人間のドラマになっている。

 

そんな手法に引きつけられ目が離せなくなった。母に危害を加えるものから守りたい一心から少年は格闘技の道を選ぶも不公平な判定の前に挫折する。かつての自分を見るような眼差してその青年に愛着をもった男がいた。

 

やがて、かつて諦めた自分の夢を託し、その青年とともに燃焼させようとする初老のボクサー。それを取り巻く個性きらめく人達をベテランの演技がもり立て、膨らみをもたせ、やがて一つのエネルギーに修練していく。痛快で、誰もがどこかに共感できる見応えのあるドラマになった。

 

母子家庭、シングルマザーの貧困、家族間の不和、ひとり父を介護する娘、それぞれの人生が考察し、最後は王者決定戦のリングに集結する。

 

話の展開はうますぎるといってもいい。最後までアカせず、タイトルの名のように桜の花びらのように舞い散る。これこそ、中年男の美学である。

 

見てよかったと思わせてくれた今年の代表作と云ってもよい。