紀州屋良五郎の大衆演劇・上方芸能 通信

大衆演劇については全国の劇場や公演場所に出かけ、その地での公演の所感・演出効果・劇団の印象を綴ります。さらに大道芸や上方落語、講談、音頭、漫才、見世物、大道芸、放浪芸、映画評についても思いつくままに書き留めてまいります。 末永くのおつきあいをよろしくお願いいたします。

▩ 映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』を見た

〇 こんな映画を見てみた

 

〇 予告編

水木しげる原作の「ゲゲゲの鬼太郎」に登場する鬼太郎の父と、水木という男との出会いを描いたアニメーション

〇 概略

STORY

廃虚となった哭倉(なぐら)村に鬼太郎と共にやってきた目玉おやじは、70年前に起きた出来事を思い出していた。昭和31年、哭倉村は政財界を裏で操る龍賀一族に支配されており、鬼太郎の父は失踪した妻を捜しに村に足を踏み入れたのだった。一方、血液銀行で龍賀製薬を担当する水木は、龍賀一族の当主・時貞の死に伴い、ある密命を帯びて村を訪れるが、そこで一族の者が惨殺される事件が起こる。

キャスト

(声の出演)、関俊彦木内秀信種崎敦美小林由美子白鳥哲飛田展男中井和哉沢海陽子山路和弘皆口裕子釘宮理恵石田彰古川登志夫沢城みゆき庄司宇芽香松風雅也野沢雅子

スタッフ

原作:水木しげる
監督:古賀豪
脚本:吉野弘幸
キャラクターデザイン:谷田部透湖
美術監督:市岡茉衣
色彩設計横山さよ子
撮影監督:石山智之
製作担当:澤守洸、堀越圭文

〇 私の見たままを感じるままに
この映画は水木しげるさんの実体験、人生経験が深く関わっている映画だ。中でも、従軍し
戦地で見たもの、体験したこと、幼少期に聞かされた妖怪伝説も随所にかたちを変えてでてくる。目玉おやじとしてあらわれるのは鬼太郎の父とされる。
背景となる時代は敗戦直後から復興期にかけての日本。哭倉村という人里はなれた寒村に政財界を裏で操る龍賀一族が住んでいた。売血時代に製薬業の根幹となる血液銀行があった時代である。その会社が製法を開発したといわれる不老不死の妙薬Mのルーツを探り、龍賀製薬との取引を進めるため当主死亡後の相続の場に取り入る。
そこで展開される欲と業が織りなす生々しい血族の争いはまるで横溝正史のミステリーを見るようである。廃病院、おびただしい骸と化した断末魔の人間、それらはみな薬剤のための血液を採取する道具に過ぎない。それらの光景を見ていると私にはかつて我が国が隣国で行っていたと伝承される731石井部隊の人体実験と重なってくる。
これらの地獄絵図、阿鼻叫喚のすがたこそほんとうに身に迫る恐怖を抱かせる。ゲゲゲの鬼太郎のはなしの怖さの本質をみた思いがする映画である。これらの情景を今にたとえるとするならばイスラエルにより今も破壊され尽くされているガザ地区の地下病院の姿そのままではないか。
人間の恐怖は身近に死を意識するところにあると私は思う。生ぬるいゾンビ映画など糞食らえ
というほどの構成力のある作品だ。ホラー映画としても一級だと高く評価したい。